中国現場カイゼン研究会のコラム

中国における製造業の生産性向上をデジタルとTPSでサポート。中国に製造にまつわるアレコレを書いてます。

日系企業に勤める中国人の意識 「用人不疑・疑人不用」

カイゼン研究会のパートナーであり、HRP(ヒューマンリソースパートナー)日中異文化経営コンサルタントとして、フリーランスで活動している金です。

 

私は日本生まれ日本育ちの華僑第3世で、中国で1990年代後半から活動をしています。

 

中国における経営・事業・組織・人事・マネジメント・コミュニケーションを含め、日々気づいた事をこうしてメルマガで発信させて頂いております。

 

 

【大学生はエリート中のエリート】

中国にはどのぐらいの大学生がいるのか?

 

全中国の人口が約14億。

 

大学生の数は2021年時点で約3700万人と言われています。

 

世界一です。

 

大学生の数は政府の「拡招」(国家の安定を維持し続けるためには教育水準の向上が必要)方針もあり、2003年の212万人から大幅に増えています。

 

14億分の3700万がいかにすごい数字かお分かりいただけると思いますが、中国における大学生はエリート中のエリートと言えます。

 

また本科への進学率も54%となり、大衆化教育段階である50%を超えました。

 

日本は64%で教育レベルは普及段階と言われています。

 

【変化する大学生の環境(培養費・分配・初任給)】

数十年前の中国における学生は国家が養成したエリートでした。

 

大学はすべて国立大学。

 

学費は無料でしたが本科への進学率は2%(90年代初頭)

 

当時の学生は超がつくエリートであり彼らの就職先は国家と大学で決めていました。

 

これが「分配」です。

 

就職先のほとんどは国営企業でした。

 

また分配がされないもしくはリストから外れていた企業が学生を採用する場合大学にお金を払っていました。

 

これが「培養費」です。

 

大学のレベルによって金額は違っていたようです。

 

現在培養費はなくなっています。

 

初任給も私の記憶では1996年前後は1000元~1500元ぐらいが相場でしたが、現在は5000元以上が相場として存在しています。

 

ある調査では希望は10000前後だとも言われています。

 

【学生数は増え続けるものの就職難】

卒業生の数は2019年で834万人。

 

改革開放とともに成長し続けている中国。

 

次世代を担う高い教育レベルを誇る人材予備軍である大学生の数は、現在の経済成長を続ければ今後もさらに増え続けることでしょう。

 

しかし就職率は全国で約70%(上海は85%)就職難状態がここ数年続いています。

 

中国にとっては大きな社会問題となっています。

 

よりよい就職を求め大学院に進学する学生も多く見受けられます。

 

企業はなぜ高度な教育を受けた優秀な学生を採用しないのでしょうか?

 

いくつか理由はありますが、大きな理由として

 

1.育成している時間がなく採用は即戦力中心

2.人材の流動率も高く育成しても転職する

 

社会の安定をはかるために教育レベルを高める政策が現実の社会においては逆の結果となり就職先を失った学生が社会不安の要素のひとつとなっています。

 

正常な状況下ではない学生の就職は当然いびつな形となります。

 

「どこでもいいから就職できればいい」

「就職してから転職すればいい」

「履歴書はとりあえずすべての企業に投函する」・・・

 

情報が少ない就職活動において学生は負のスパイラルにおちいります。

 

終身雇用ではなく期間限定契約である中国において育成後の転職という問題はついて回りますが、今一度新卒マーケットを新たなマーケットとして再考してもいいのではないでしょうか。